憲法破壊のアベ自民党改憲案を発議させないために
 「アベ改憲案」って、どんなもの?

   
 
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 憲法破壊のアベ自民党改憲案を発議させないために
                                                    つくし 建彦
  いまの国会では、自民党の議席は衆議院で61%足らず、参議院で52%足らずで、単独では改憲案の発議に必要な3分の2(66.7%)に達していません。自民党に近い維新の会は、衆院で2.4%余、参院で4.5%余で、これを加えても衆院では63%強、参院では56%強で、どちらも3分の2になりません。
 発議の決め手は公明党で、衆院で6.2%、参院で10.3%を持ち、自民+維新+公明で衆院は約69.5%になりますが、それでも参院は66.5%で3分の2に達しません。希望の党や無所属の中の積極改憲派議員をかき集めれば、ようやく衆参両院で3分の2を超えますが、発議しようとすれば強行採決になるのは必至です。
 自民党の改憲案は、内容からも議席数からも、まして国民世論からも、発議には相当の無理と暴挙がなければ困難です。なので、憲法改悪を止めるには、改憲案の発議ができない圧倒的な世論の壁を築くことが何よりも重要です。いま全国津々浦々で取組まれている3000万人署名(安倍9条改憲NO!全国統一署名)の成功は、その大きな柱となります。
 そして2018年中の発議をくい止めれば、2019年には予算国会(1~3月)、統一自治体選挙(4月)、天皇の退位と即位(4~5月)、G20大阪(6月下旬~7月上旬)、参院選挙(7月)、消費税再引上げ(10月)、ラグビーのワールドカップ(9~11月)などと重要な日程が立て込み、ますます発議は困難になります。特に、7月の参院選で改憲派の議席を減らせば、「アベ改憲」は不可能になるでしょう。
 森友・加計疑惑と公文書改ざん、南スーダンPKOでの「日報」隠し、労働法制改悪法案と労働時間の偽りのデータ、前川氏の講演への安倍派自民党議員の政治介入など、国会も市民も欺き、民主主義の根幹を否定する安倍政治を、これ以上許してはなりません。
一人ひとりの行動と全国の津々浦々のみんなの力で、危険なアベ9条改憲を止めましょう。
                                                             2018年4月5日
  「アベ改憲案」って、どんなもの?
 自民党改憲本部(憲法改正推進本部)は、3月25日の党大会までに4項目の改憲条文案をまとめました。その内容は、昨年5月3日に安倍首相が突然打ち出した、①9条に「自衛隊」を明記する、②緊急事態条項を新設する、③教育無償化を規定する、④参院選の合区を解消する、という“アベ改憲4項目”が柱になっています。
 安倍首相は、念願とする9条改憲には反対が強いため、「自衛隊を書き込むだけで、9条の1項、2項は維持するので、今と何も変わらない」と説明してきました。それはウソです。現9条は空文化し、平和憲法は「戦争できる憲法」に変ってしまいます。
 また、緊急事態条項の新設も、政府が「緊急事態だ」と宣言したら、私たちの人権を奪い、国会の権限も無視して、内閣が独裁権を握るという恐ろしいものです。
 教育無償化は、現在の憲法でも政策と財政措置さえあれば実施できるものですが、自民党は予算措置に強く反対してきました。しかし安倍首相は、改憲への国民の支持や維新の会などの賛成を得るために、あえて掲げた“エサ”でした。
 参院選の合区解消にいたっては、一票の格差解消という目的より、自民党に有利な大都市以外の地域で議席を確保したいという“自民党エゴ”による改憲案なのです。
 この改憲案は、年内の発議に向け「成案を得るため、最終的な議論を重ねていく」
(安倍)とされ、他党との談合が進めば若干の字句が変わる可能性がありますが、当分は大きな変化はないと思われます。そこで、このアベ自民党改憲案の危険性や問題点を考えてみましょう。
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 ① 「9条に自衛隊を明記」――武力で平和はつくれない!
“海外で戦争できる自衛隊”で9条を空文に


 自民党の9条改憲案を見る前に、現憲法の9条をもう一度確認しておきましょう。
 9条 日本国民は…国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇
   又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
   ② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の
   交戦権は、これを認めない。

 自民党改憲本部は党大会前日の3月24日、細田本部長に「一任」されていた9条改憲案を「一本化」したと発表しました。しかし、党内には「何を一任するのか分からない」という批判があり、「一本化」も多数決で、決して「意見一致」ではありません。これまで「多くの案を検討」という演出でしたが、改憲本部中枢の安倍派は初めから、石破氏らの「2項削除」でなく、「2項を残す」=“穏健な安倍案”を選ぶというシナリオでした。
 平和憲法の核心である9条を空文化するための自民党案は、「9条の2」を新設し、①(現9条は)「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として…自衛隊を保持する」、②「自衛隊の行動は法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」となっています。
 この条文案は、いかにも「専守防衛」「文民統制」と読めるかのような表現になっていますが、実は次のような落とし穴が組み込まれています。
 ①「必要な自衛の措置」とは、専守防衛ではなく、安倍政権が2015年に強行採決で成立させた戦争法(安保法制)で可能とされた集団的自衛権の行使や国際紛争への武力介入を含むものです。これは、日本が攻撃されていなくても、“密接な関係がある国”の武力紛争やその他の国際紛争に自衛隊が軍事介入できるという憲法違反の法律を憲法で正当化するという術策なのです。
 ②これに対する批判を気にして、途中までは「必要最小限度の実力組織である自衛隊の保持を妨げない」とする方向で調整するとしていました。「必要最小限度」という言葉は、政府にとっては実際には伸縮自在で、確実な制約規定にはなってきませんでした。しかし、「最小限度」という言葉を入れると、自衛隊を際限なく増強させる場合の制約になりかねないということから、「最小限度」を削除し、「必要な措置…のための自衛隊」としています。「必要」がどれだけかは、政府与党が勝手に決めることができるように。
 ③「戦力」という言葉を使わず、「自衛のための実力組織」としても、海外で戦争できる自衛隊を戦力ではないと誰が思うでしょうか。今では世界有数の「戦闘能力」を持つに至った自衛隊は、特に相手国(敵)から見れば正真正銘の「戦力」にほかなりません。こうして、自衛隊が「実力組織」か「戦力」かという“違憲論争”は終わりません。
 ④自衛隊の行動への「統制」は、「法律」で「国会の承認その他」とされていますが、実際上はどちらも、時の政府与党の判断にゆだねられることになります。その結果、「統制=無制限」になるおそれはなくなりません。
 このように、安倍自民党の9条改憲が成立すれば、第1項で戦争と武力行使を永久に放棄し、第2項で戦力の保持を禁じた9条は、武力行使を許し、そのための戦力の保持を認めるものになり、平和憲法は「戦争できる憲法」に完全に変質してしまうことになります。
 「今の自衛隊と何も変わらない」とか、「自衛隊が違憲かもしれないという議論を終わらせるため」と言う安倍首相に騙されてはなりません。形の上で2項を残しても、海外で武力行使ができる自衛隊が明記されれば、「後法優先の原則」で戦力不保持の2項は空文化し、1項も変質してしまいます。実際、安倍首相周辺は、「次には2項を削除する」と公言しています。「2項を残す」というのは、当座しのぎの目くらましなのです。
 自衛隊ができて64年間、自衛隊員は一人も戦死せず、一人も殺したことがありません。今年で71年になる憲法9条が戦争や武力行使を禁じてきたからです。憲法9条は自衛隊員の生命も守ってきたのです。戦争法の下での自衛隊が憲法に明記されれば、日本は武力紛争の当事者になり、自衛隊員は殺し殺されることになるでしょう。
 武力で平和はつくれません。子や孫のためにも、9条改憲を許してはなりません。 
 ②緊急事態条項
「緊急」を口実に政府が独裁権を握る

 自民党改憲本部は3月7日、検討中の改憲4項目の一つの「緊急事態条項」について、執行部提案の「大規模災害時には、①内閣は国会の議決を待たず法律と同じ効力を持つ政令をつくり、予算の支出などができる。②衆参議員の任期延長、選挙延期の特例を定めることができる」という規定を盛り込む方向を確認しました。
 国会の承認なしの政令制定、予算執行は、ヒトラーが独裁を行った「全権委任法」と同様、内閣が勝手に基本的人権を制限・はく奪し、思いどおりに政策を実行できるというもので、事実上、首相に独裁権を与えることになります。
 このような案は、2012年の自民党改憲草案に盛り込まれましたが、その危険性が各界から強く批判され、安倍首相も改憲本部も当面は手をつけないことにしていました。ところが、最終的に自民党改憲案をまとめる段階になって、突然“復活”してきました。
 一応、執行部案には、12年草案にあった「武力攻撃、内乱等の社会秩序の混乱、その他の緊急事態」という文言はなく、「大規模災害」に限定されています。また、国や公的機関の指示に「何人も従わなければならない」という文言も外されています。
 しかし大規模災害時には、災害対策基本法などで内閣は緊急政令を出し、市町村長には避難指示や通行禁止などの権限も認められるなど、現行法で対処できます。必要なのは、災害対策の整備・充実であり、原発の廃止や避難対策の確立などの政策なのです。
 また、改憲案の条文に「強制」がなくても、内閣がつくる政令に人権制限や強制の規定が盛り込まれることは防げません。次には「緊急事態」の定義や適用対象が拡大され、内閣が「緊急事態」と宣言しさえすれば全権力を握る道が開かれるでしょう。この手段が世界の独裁国家で猛威を振るい、民主主義を圧殺してきたことを忘れてはなりません。
 なお、衆院総選挙中の緊急事態では、現憲法(54条2項、3項)で「参院の緊急集会」が定められており、選挙延期などは公選法の適用や改正で対応できるものです。憲法に任期延長を入れなければ大規模災害に対処できないというのはコジツケのたぐいです。
 一部の報道では、「今後の各党間の協議で内閣の権限強化は見送られ、国会議員の任期延長だけに絞られるとの見方が強い」とも報じられています。しかし、「緊急事態宣言による内閣の独裁権掌握」は彼らの長年のホンネであり、けっして油断はできません。その危険性は甚大です。

③参院選の合区解消案
自民党議員だけの都合で「合区を解消」

 自民党改憲本部は2月16日、参院選で導入された「合区」を解消するという改憲案を示しました。「合区」とは、参院選で人口の多い都道府県と少ない県の1票の格差があまりに拡大したため、「法の下の平等」(憲法14条)を確保するために、人口の少ない鳥取県と島根県、徳島県と高知県がそれぞれ1選挙区となったものです(定数2=改選数各1)。
 1票の格差が4・77倍という異常な状態に対して起こされた違憲・無効訴訟で、最高裁は2010年と2013年の参院選はいずれも「違憲状態」と判断し、都道府県単位の選挙区の見直しを検討するよう国会に求めました。これを受けて2015年に公職選挙法が改定され、2つの合区が導入されました。
 公選法改定にあたって、民主党(当時)と与党の公明党は格差を圧縮するため「20県10合区」を提案しましたが、自民党は自分たちの議員が有利な地方で合区が増えると不利になるとして反対、「4県2合区」を強引に成立させました。そのため、格差は3・08倍という大きなままになりました。
 そして今度は、安倍首相と自民党は、その2つの合区もなくせば自民党に有利な制度になるとして、各県に「改選ごとに少なくとも1人」の議席を割り当てるという「改憲案」をまとめました。これは「法の下の平等」も、「全国民を代表する(国会)議員」(憲法43条)という原則も無視して、人口の少ない県で自民党の議席を確保したいという、自民党のエゴイズムむき出しの案です。
 また、合区は公選法の改定で導入されたのですから、4県2合区を見直すなら公選法の再改定で可能だし、そうするのが常識です。それを自民党の利益のためなら憲法も法律も変えろという暴論を真っ先に打ち出したのは、自民党内で合意しやすかったからにすぎません。与党の公明党も積極的改憲派の維新の会も、この「合区解消改憲案」に冷ややかなのは当然です。
 さらに、「9条改憲」だけでは露骨すぎて批判されるのをかわすため、「合区解消」論で人口減の地方の歓心を買うという“目くらまし効果”も狙っていると言えるでしょう。
 
④「高等教育の無償化」はあいまいに
不必要な「目くらまし」の教育改憲案に


 安倍首相は、「安倍改憲」として4つのテーマを打ち出しましたが、その1つは「高等教育の無償化」でした。義務教育の無償化は現憲法26条に定められているので、無償化を高等教育まで拡大するという謳い文句でした。
 しかし、高等教育の無償化は憲法を変えなくても、政策と財政措置でできることです。スウェーデンなどは、経済条項は憲法(基本法)にありませんが、無償教育は当たり前のこととして幼児教育も高校も無償、大学、博士課程も授業料なしで、憲法に規定するという議論はありません(2017年7月、衆院憲法審査会欧州視察報告)。
 安倍首相は、「9条改憲」だけでは国民の支持が得られないと考え、また国会での発議で維新の会などの協力を得るためのエサとして、「教育無償化」を打ち上げたのです。
 ところが、大型公共事業や防衛費を優先したい自民党は、かねてから高等教育の無償化に大反対で、党の改憲本部(憲法改正推進本部)の議論でも反対論が噴出してまとまりませんでした。そこで、改憲本部の多数派を占めた安倍派は、「無償化」という言葉を削り、
「経済的理由によって教育上差別されない」、「国は…教育環境の整備に努めなければならない」という文言に置き換えた条文案をまとめました。これもごまかしです。
 なぜなら、教育基本法には、第二次大戦後の基本法(3条)にも、2006年に改定された基本法(4条)にも、すでに「人種、信条、性別、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と明記されているからです。その中から「経済的理由」だけを抜き出して憲法に書かなければならない必要性はまったくありません。「教育環境の整備」も、教育基本法に書き込まれており、憲法を変える理由にはなりません。
 さらに、自民党の教育に関する条文案は、「教育が…国の未来を切り拓く上で極めて重要」という文言を入れることになっています。これは、「個人の人間形成」を柱にしていた旧教育基本法を第一次安倍内閣が改悪し、「国と郷土を愛すること」を教育の目的に入れた考えを引き継いだもので、国家主義教育への固執の現われです。
 「無償化」の言葉の扱いで自民と維新の会の談合が行われていますが、もともと教育無償化は憲法問題ではなく、政府と国会の政策上の「ヤル気」の問題なのです。安倍・自民党の「目くらまし」に惑わされないよう気を付けましょう。
PDFファイルで 
上澤美男 憲法を生かす会関東連絡会               問合せ先 E-Mail: info@ikasukai.sub.jp