憲法を生かす会関東
憲法を生かす会関東連絡会ニュース
第8号    2014年6月4日  


広範な共同行動でアベの憲法破壊にSTOPを!

集団的自衛権の行使や多国籍軍への参加は、海外で戦争をすること。
      戦争で殺すことも殺されることにも反対します!


閣議決定で「戦争する国」にするな!6・17大集会
日時:6月17日(火)18:30〜(プレ企画18:00〜)
場所:日比谷野外音楽堂/集会後デモ19:30〜(国会請願と銀座コース)
スピーチ:池田香代子さん(翻訳家・世界平和アピール七人委員会)
連帯挨拶:戦争をさせない1000人委員会、日弁連憲法対策委員会、日本ペンクラブ
     立憲デモクラシー、国会議員など
主催:解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会(http://kyyjyoukowasuna.Com/)


「戦争をさせない全国署名」提出6112大集会
日時:6月12日(木)18:30〜
場所:日比谷野外音楽堂/集会後国会包囲行動へ
主催:戦争をさせない1000人委員会(nttp:/www.anti-war。Info/)
 *「戦争をさせない全国署名」の第2次集約は9月30日に設定されました。


憲法を生かす会関東連絡会第8回総会・交流会
日時:6月14日(土)13:30〜17:00
会場:横須賀市「ヴェルクよこすか」(勤労福祉会館)
京浜急行「横須賀中央」駅下車・徒歩5分
  *参加・問合せは、各県「憲法を生かす会」まで



集団的自衛権の行使」は海外で戦争すること
広範な共同行動で安倍の憲法破壊の暴走にSTOPを



筑紫建彦(憲法を生かす会)
 はじめに
 5月15日、安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)が報告書を出した。すでに事前からアナウンスされていたように、集団的自衛権の行使を“憲法上可能”とする憲法解釈の大転換を求め、さらに国連の集団的安全保障措置としての軍事制裁行動や、PKOなどの「国際平和活動」にも参加して武力行使ができるとし、加えて、警察権と個別的自衛権の「グレーゾーン」と呼ばれる分野でも自衛隊が直接に出動できる法制整備を求めるなど、全面的な「戦争する国」への飛躍を促すものである。
 安保法制懇のメンバーは、外務省や防衛省の元高官、国家主義的改憲論者の学者など、“安倍のお友達”で占められ、初めから集団的自衛権の行使は“憲法上可能”という結論を出すための舞台装置にすぎなかった。特に外務省中枢は、“日本が大国としての国際的発言力を強めるには、海外で武力行使できる国になることが必要”という思想が強い。彼らには、安倍の再登場は、まさに“好機到来”だった。
 安倍首相らにとって、自衛隊が海外で武力行使することが、他国民を殺し殺されることであることの意味を感じ取る感覚も想像力もないのだろう。まして、憲法の大原則を十数人の閣僚の“解釈”で覆すという立憲主義の否定にも、忸怩たる思いはまったくないようだ。
 私たちは、この恐るべき“集団暴走”をくいとめないと、平和と自由と人権の未来はなく、それこそ“生命の危機”に直面しかねない。

 安倍首相の粉飾レトリック
 安保法制懇報告の骨子は以下に述べるが、この報告書を受け取った安倍首相は問をおかず記者会見を開き、「基本的方向性」を発表した。
 “いかなる事態においても国民の命と暮らしを守る”ために、「切れ目のない対応を可能する国内法制を整備する」と宣言した。
 その最初の柱を「グレーゾーン事態への対処強化」としたが、これは、集団的自衛権行使に否定的な世論と公明党に向け、“これなら受け入れられるだろう”という誘い水である。
 次に、報告書の「個別的か集団的かを問わず自衛のための武力行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はない」という提言には、「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない。憲法が、こうした活動のすべてを許しているとは考えない。したがって、この提言は、政府として採用できない」と“否定”してみせた。報告の大きな柱の一つを切ってみせるという“アベ歌舞伎”である。
 だがこれは、最後に置いた「集団的自衛権の“限定的”行使について、政府としてさらに研究を進めていきたい」という本筋にまぶした粉飾のレトリックである。なぜなら、“限定的”であろうと、集団的自衛権を行使すること自体が、「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない」からである。集団的自衛権の行使や集団安全保障措置への参加による武力行使の“全面解禁”は「憲法が許していない」としつつ、“限定的”な武力行使なら「許している」と、勝手に使い分けている。どちらも「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない」のは明らかで、これは論理矛盾である。
 なお、首相会見を報じたマスコミは、首相が否定したのは「集団安全保障措置における武力行使」だと解説した。しかし、「基本的方向性」でいったん「採用しない」としたのは、集団的自衛権の行使と集団安全保障措置の両方での武力行使の“全面的・無制限”の合憲解釈で、その上で“集団的自衛権の限定的行使”を採用するとしているのである。そして「基本的方向性」は、“限定”論では集団安全保障については触れていない。この混乱した文脈にマスコミも混乱したのかもしれない。

 武力行使の「事例」−4類型
 そこで、安保法制懇が打ち出した武力行使の「事例」を見てみよう。
 まず、第1次安倍内閣の安保法制懇が提言した 「4類型」は、そのまま踏襲されている。すなわち、(1)公海における米艦の防護、(2)米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃、(3)国際的平和活動(PKO等)における武器使用、(4)同じ国連PKO等に参加している他国の活動への後方支援(「駆けつけ警護」等)の4つ。
 これらについては、(1)米艦を防護できるほど近くにいる自衛艦は攻撃されず、米艦だけ攻撃されているというシナリオになるが、有事の艦隊は広く散開するのが常識で、こんなシナリオは非現実的と批判されている。最近は、“日本人避難者を載せた米艦の防護”という事例まで持ち出しているが、避難民を米艦が輸送する可能性はほとんどない。
 (2)米国に向かう(北朝鮮からの)弾道ミサイルは、北海道のはるか北を飛び、日本のイージス艦は対応できないし、標的がハワイやグアムなどの場合、発射国にさらに近い沖縄などの在日米軍基地は放置して、いきなり遠方の米軍基地を狙うというシナリオも非現実的である。
 (3)の“国際的平和活動”とは、安保理決議による武力制裁から、安保理決議を強引に解釈した多国籍軍などの武力行使まで含まれうる。いずれも「国際紛争の解決のための武力行使」としなり憲法違反である。
 (4)のPKO等における他国部隊への“後方支援”は、武器弾薬などの供給や兵員輸送など、政府も憲法上できないとした「武力行使との一体化」になり、“駆けつけ警護”は自衛隊が戦闘の直接的な当事者になることを意味する。直接的か間接的かを問わず、自衛隊は殺し殺される場面に踏み込むことになる。

 武力行使の「事例」一際限ない拡大へ
 今回の報告では、上記「4類型」に加え、多くの分野で武力行使が可能とされている。
 それは、@日本近隣での有事の際の船舶検査や米国等の艦船等への攻撃排除、A米国等が攻撃された場合の連携・支援、B日本船舶の航行に重大な影響を及ぼす海域(海峡等)での機雷除去、C国際秩序の維持に重大な影響を及ぼす武力攻撃が発生した際の国連の決定に基づく活動への参加、D日本の領海で潜没航行する外国潜水艦が退去要求に応じない場合の対応、E海保等の速やかな対処が困難な海域や離島等において武装集団が不法行為を行う場合の対応、F在外自国民の保護・救出、G領域国の治安回復・維持活動の補完・代替、H海賊等に対処する活動(国際治安協力)などである。
 このうち、@、A、Bの事例は、日本以外の当事国間の武力紛争に日本が軍事介入するもので、「4類型」の(1)(2)とあわせた5つの事例は集団的自衛権の行使そのものである。
 Cは、安保理決議による武力制裁への参加で、集団的安全保障の枠組みでの武力行使である。日本は国連加盟の際、憲法の規定で武力行使はできない旨を表明している。
 DとEは、一義的には海保や警察による警察権の行使(7)分野だが、ここに当初から自衛隊が出動できるようにしようというもの。日中平和条約では、紛争の解決に武力は用いないと定められ、実際、尖閣問題でも両国は“軍”の出動は控えている。これを“個別的自衛権”の範疇として法制化しようとしているが、それ自体が武力衝突の危険性を増すことになる。
 Fは、これまでに自衛隊は陸海空のいずれでも部隊を派遣して、在外日本人の避難輸送ができる法律がつくられてきたが、本格的な“保護・救出”作戦となると、武力行使が前提となりうる。米国のグレナダ侵攻(1983年)やパナマ侵攻(1989年)、あるいはロシアのウクライナへの軍事は力(2014年)は、“自国民保護”の名目で軍事介入し、相手国政権の打倒や国家分裂を強行するものだった。
 Gは、相手国の主権行使である治安維持を自衛隊が代替するもので、自衛隊が内戦などの一方の当事者になり、反政府運動・勢力を鎮圧・殺害することになりかねない。自衛隊は“敵軍”とみなされ、攻撃対象になるだろう。
 Hは、すでにソマリア沖の海賊対策が実施されているが、“国際治安協力”の名で世界のどこにでも自衛隊が出動し、“海軍力の誇示”ができることになる。
 しかも、報告はわざわざ、「これらの事例のみを合憲・可能をすべきとの趣旨ではない」と拡大を示唆している。岡崎久彦委員は、事例以外のパターンは「無限にある」と語っている。これらは単なる“例示”にすぎないのである。

 集団的自衛権行使の「条件」
 安保法制懇報告は、集団的自衛権行使の条件を次のように提言している。
 (1)日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受け、(2)その事騒が日本の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、(3)日本が直接攻撃されていなくても、(4)その国の明示の要請または同意を得て、(5)必要最小限の実力(武力)を行使して攻撃排除に参加、という5条件である。
 このうち、(1)「密接な関係にある国」とは、安保条約を結んでいる米国だけを指すのではない。どの分野であれ“密接”と主張できればよく、たとえば、投資・貿易で密接な東南アジア諸国、石油供給で密接な中東諸国、電子産業に不可欠なレアメタル産地のアフリカ諸国などにも“密接な関係”と称して軍事介入できる。
 (2)の「日本の安全に重大な影響」とは非常にあいまいで、“安全”をどう判断するか、“重大な影響”とは何か、どれだけでも伸縮自在の恣意的な判断ができるものである。
 (3)は、個別的自衛権の行使を“合憲”とするため、“日本が攻撃されたときのみ”と説明してきたが、それを反故にするものである。
 (4)その国の「要請または同意」というのは、それがなければ明らかな侵略だが、当該政府が弱体で日本政府からの「要請・同意」の要求を断れなかったり、強権・腐敗に対する反政府運動などで窮地に立った場合などに軍事支援を求めれば、日本は容易に“要請”が得られる。日本のODAは、相手国政府の“要請”が前提とされているが、その内容は日本の商社などが作成して相手国政府から日本の外務省に提出させるというシステムも存在してきた。この形式的な“要請”の真偽や意味が明らかになるのは、武力行使が終わった後になりかねない。
 (5)「必要最小限の武力行使」とは、個別的自衛権の行使を“合憲”だとする条件として政府が用いてきたもので、それを集団的自衛権の行使に持ち出したもの。実際はこれもきわめてあいまいで、“敵軍”の規模や能力、兵器のレベルなどによって、いくらでも拡大しうる。
 なお、安保法制懇の報告は、5条件に加えて「国家安全保障会議の議を経て、事前または事後の国会承認」の手続きを要件としているが、4閣僚の合意と与党の賛成だけで武力行使が可能となるもの。まして事後の場合、ベトナム戦争(北爆)やイラク戦争のように、武力行使が虚偽または誤りだったことが分かっても、取り返しはつかない。首相が間違っても「総理大臣を選んだ国民が悪い」(岡崎久彦委員)とは、あいた口がふさがらない。

 ご都合主義的パッチワーク
 安保法制懇の報告書の憲法解釈は、憲法解釈の歴史だけでなく、憲法の条項すら曲解し、裏読みし、逆の意味づけを行うといった、めちゃくちゃな論理である。“自衛”という名さえ付ければ、いかなる武力行使も合憲だという結論を打ち出すための、“ご都合主義のパッチワーク”と呼ぶしかない。
 報告書は、「(この)憲法解釈の整理は、憲法の規定の文理解釈として導き出される」と言う。しかし、その“文理解釈”とは、「終戦直後の『自衛戦争もできない』という解釈が、『自衛のためならできる』と変わった」(この解釈大転換で国民世論は大きく分裂した!)、「最高裁は砂川判決で自国の平和と安全、存立のため必要な自衛措置はとりうると判断を示しね(論点は在日米軍の違憲性だった!)、「憲法論のゆえに国民の安全が害されることになりかねない」(個別的自衛権行使の論拠だったはずが、集団的自衛権に転用!)、「憲法前文の平和的生存権、13条の生命、自由、幸福追求権を守るためには自衛力の保持と行使が不可欠」(これも個別的自衛権行使の説明を転用。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることにないよう」は黙殺する!)、「国民主権原理の実現には、国民の生存の確保が前提」(そらぞらしい!)、「最小限度の集団的自衛権の行使が認められるという判断も、政府が新しい解釈を示すことで可能。憲法改正が必要との指摘は当たらない」(立憲主義の根本を否定。自民党改憲草案も不要?)など。
 このため安倍首相は記者会見で、お母さんや乳児の絵のパネルをかざして、「国民の命が危ない、国民の命を守る」と20回も連呼した。だが、この会見後も世論調査では反対が多く、内閣支持率は下がった。

 言い訳のオンパレ−ド
 安保法制懇報告は、こうした“憲法の文理解釈”のほかに、もっともらしい弁解も並べる。
 「9条1項は、我が国が当事者である国際紛争の解決のために武力による威嚇または武力の行使を行うことを禁止したもの」(“自衛戦争”も日本が当事者である国際紛争だ!日本が当事者でない国際紛争には武力行使ができる!?)、
 「自衛のための武力行使は憲法の禁ずる交戦権とは『別の観念のもの』と答弁されてきた。集団的自衛権の行使や集団的安全保障措置での憲法の許容する(!?)武力行使は『別の観念のもの』と観念すべき」(ひたすら、そう思え!?)、
 「PKOの国際基準で認められた武器使用が『武力の行使』に当たると解釈している国はどこにもない」(ウソ!国連PKOの「標準作戦規定」SOPには、「use of force」と明記)、
 「『武力行使との一体化』論は、実定法上に明文の根拠がない」(集団的自衛権の行使は、憲法上に明文の根拠がある?)。「憲法上の制約を意識した議論で、今日では役割を終えた」(偽りも既成事実になったから、言い訳はもう不要?)。 こんな文章を臆面もなく公表する委員たちが「憲法と法制」を論じるとは、読む方が恥ずかしくなるぐらいである。この報告は、「傲慢、素人だまし、主観主義的思いこみ」と評されるべき代物である。安保法制懇の北岡伸一座長代理は報告後、「懇談会は私的諮問機関で、正統性なんてない」と語ったが、形式上の正統性だけでなく、議論そのものにも正統性はない。

 与党協議と米国“知日派”の圧力
 首相の「基本的方向性」を受けて5月20日に始まった与党協議は、冒頭から思惑のずれが表面化した。自民の高村座長の「グレーゾーン問題と集団的安全保障、集団的自衛権における武力行使を 一括合意し、閣議決定を行う」という説明に、公明の北側座長代理は「そういう認識ではない。グレーゾーンで法律を作るなら相当詰めた議論が必要」と“個別処理”だと反論。
 「平和の党」を掲げる公明党は、何とか海外での武力行使に踏み込まないように時間稼ぎをしたい構えで、創価学会も「集団的自衛権を限定的にせよ行使する場合、本来、憲法改正の手続きを経るべきだ」と異例のコメント。自民党の石破幹事長は、「支持母体の言うままということはない」と牽制。党是と与党のうまみのはぎまで公明党がどう動くかが、大きな焦点だ。
 横畠新内閣法制局長官は参院で、「集団的自衛権の行使は憲法で認められていない」と当然の初答弁をしたが、今後を注視すべきである。
 一方、米国の“知日派”(日本操縦人)とされるキャンベル前国務次官補、アーミテージ元国務副長官、グリーン元NSCアジア上級部長らは、「会期末までの閣議決定が強く望ましい、重要だ」と露骨に圧力をかけている。今年末と予定されている日米防衛ガイドラインの再改定に、日本による集団的自衛権の行使を盛り込むためには、“会期内の閣議決定、秋の臨時国会での法制整備、暮れのガイドライン協議”という日程の確保が欠かせないと焦っている。
 「集団的自衛権の行使は海外で戦争すること〜解釈で憲法9条を壊すな!」。この声をさらに全国にひろげ、国会を、そして内閣を揺さぶり、憲法と平和を破壊する暴走を断念に追い込むことが急務である。
           (つくし・たけひこ)


 政府が提示した「15事例」を検討する

 政府が、自民、公明両党の「安全保障の整備に関する与党協議会」に提示した(5月27日)15事例について、政府の示した<事例のシナリオ>とそれに対する批判点を<検討>としてコメントする。注は執筆者が記したもの。

T.武力行使に至らない侵害への対処=3事例
 注: 警察権の行使と個別的自衛権の行使との“中間”のいわゆる 「プレーゾーン」への対処
事例1:  離島等にあける不法行為への対処
シナリオ  「武装している疑いのある集団を載せた他国船舶が我が国の離島等に接近し、その一部が上陸した。その過程で、武装していることが明らかになった。当該離島等に警察機関が存在せず、かつ、海保も近傍に所在しないことから、速やかに対処することが困難な場合がありうる。他方、適当な部隊が訓練などで近傍に所在するなど、自衛隊は速やかに不法行為の阻止や排除を行うことができる場合がありうる。」
検討:  @そのような船舶の接近、上陸を(誰が?)探知したら、都道府県警や海保に連絡が行き、対応策がとられるはず。「警察機関や海保の不存在」は考えられない。
 A「離島等」は当初、尖閣や南西諸島などの「離島」が強調された。しかし「等」とは何かとの質問に、「たとえば北海道」と答弁され、実質的に本土全域が含まれうることが明らかになった。政府は、「離島や(本土の)僻地」を例示し、自衛隊に警察権を付与する「海上警備行動」発令などの手続きを簡略化・迅速化するとしており、通常の警察権を飛び越え、直接に武力鎮圧できるようにするもの。
 B「警察機関などの不存在」は、やがて「警察などの能力不足」と読み変えられる可能性も。
事例2:  公海上で訓練などを実施中の自衛隊が遭遇した不法行為への対処
シナリオ  「自衛隊が公海上で訓練などを実施中、我が国の民間船舶が他国船舶(武装集団)から不法行為を受けている場面に遭遇。海保は近傍に存在しない。自衛隊が速やかに阻止・排除を行うことができる場合がありうる。」
検討:  @この「他国船舶」とは、海賊や、尖閣周辺などでの中国漁船、北朝鮮の武装船などを想定していると思われるが、いずれも海保が警察権の行使として対処してきた。自衛隊は直ちに海保に連絡して対処を促し、対処が実施されるまで他国船舶の近傍で“監視している”ことが基本。
 A自衛隊がいきなり「阻止・排除」という武力鎮圧に乗り出せば、対象船舶の所属国は「日本軍が自国民を武力攻撃した」と受けとめかねない。
 Bまして尖閣周辺では、「(両国は)すべての紛争を平和的手段で解決し、武力または武力による威嚇に訴えない」(日中平和友好条約第1条2項)ため、双方とも軍艦や空軍機を出さないようにしている。この条約上および政治的な配慮が覆されることになる。
事例3  弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
シナリオ  「我が国近隣で、武力攻撃が発生していない状況下で弾道ミサイル発射の徴候があり、米イージス艦と自衛艦が警戒中。イージス艦は弾道ミサイル対処中は、航空機・対艦ミサイルからの自艦防御能力が相対的に低下する。米国が米艦防護を要請してきた。」
検討:  @米国は太平洋に30隻ものイージス艦を配備、自衛隊は6隻。しかも、米イージス艦の対空能力は自衛隊のイージス艦より優れている。
 A相手国の航空機や対艦ミサイルへの自衛隊の対処は、まず、日本の防空識別圏や領空の警護活動となるはず。
 Bこれを超える自衛隊の武力行使は、相手国にとって「自衛隊による先制攻撃」となり、日本攻撃の理由になりうる。
参考:  領海内で戦没航行する外国の軍用潜水艦への対処
シナリオ  「戦没航行する外国の潜水艦が領海に侵入。自衛隊が海上警備行動で浮上や退去を求めたが、要求に応じず排徊を継続する場合で、我が国に対する武力攻撃と判断されない段階。」
検討:  @戦没航行する潜水艦は、安保法制懇報告では「事例」の一つとされたが、政府の提示では「参考」に格下げされた。これは問題点が多いため、「論点整理が必要で、警告の手段は限定される」という認識に至ったからだ。
 A潜水艦は、浮上や退去の要求がされ(=発見され)た場合、直ちに離脱することが鉄則。「排徊を継続」など考えにくい。
 Bその潜水艦が事故などで浮上や移動ができない場合、自衛隊が爆雷警告や直接攻撃に出たら、害意のない多国艦を先制攻撃したと受けとめられ、本格的な戦争に発展しかねない。
U.  国連平和維持活動(PKO)を含む国際協力等=4事例
事例4:  侵略行為に対抗するための国際協力としての支援
シナリオ  「ある地域で侵略行為が発生し、国連安保理が加盟国に『武力行使』容認決議を採択。多国籍軍が構成され、国連および米国など各国から拠点間の輸送、水・燃料の補給、負傷者への医療など『武力行使』に当たらない支援活動への自衛隊派遣の要請があった。」
検討:  @武力行使中の他国軍への後方支援は、本来、また相手国からは日本による武力行使と解される。“直接鉄砲を打っていないから武力行使ではない、武力行使と一体化したものではない”というのは、日本だけの勝手な理屈だ。
 A他国での侵略の事態は、まぎれもなく「国際紛争」であり、その“解決”のために自衛隊という武力を用いるのは憲法9条に違反する。
 B侵略軍一多国籍軍の武力衝突では、多数の民間人の被害や難民・避難民が発生する。日本は、平和解決のための独自の外交努力とともに、これらへの人道支援に力を注ぐことで、“責任ある国際社会の一員”(政府説明)となることができる。
 注:  政府は6月3日、憲法上できないとしてきた「武力行使との一体化」になる活動について “新基準”を示した。@支援する部隊が現に戦闘行為を行っている、A提供する物品が他国の戦闘行為に直接用いられる、B自衛隊の活動場所が他出の戦闘行為の現場に当たる、C後方支援が戦闘行為と密接に関係する、という4条件すべてを満たす場合以外は「武力行使との一体化」ではないというもの。4条件のうち1つでも欠けていたら「武力行使との一体化」にはならないことになり、事実上の全面解禁に等しい。
事例5:  駆けつけ警護
シナリオ  「自衛隊部隊が国連PKOに参加しており、周囲では我が国のNGOも復興のために活動しているが、情勢は安定していない。そのNGOや他国部隊を含むPKO要員が自衛隊の所在地から離れた場所で武装集団に襲われた。近くに対処能力を持つ部隊は自衛隊だけで、救援を要請してきた。」
検討:  @「駆けつけ警護」の対象は、従来、PKOの他国部隊とされてきた。今回は「我が国NGO」を前面に出し、“民間人の救護”かのようなイメージ操作をしている。
 APKOは本来、停戦の実現を前提に派遣されるが、しばしば情勢は不安定化し、武力衝突が再燃しうる。紛争の一方の当事者が、PKO部隊も“敵(政府)側”とみなす場合、攻撃の対象になりうる。その対象部隊を武力で支援・救出すれば、自衛隊が紛争の当事者になる。なお、攻撃者が強盗などの場合は、“犯罪からの防護”として憲法上の武力行使とは別との解釈が成り立つが、敵対する当事者に“テロリスト、犯罪者”というレッテルを貼る例は多く、判別は容易とは言えない。このため、現PKO法では、駆けつけ警護は自衛隊による武力行使となる恐れがあるとして、許されていない。
 BNGOは“非軍事・中立”を掲げ、それを信頼する地元住民に密着した活動が特性で、情勢の悪化を独自にキャッチし、その場合は退避・撤退する。それが“日本軍に守られている”(軍隊に地元情報を伝えている)となれば、活動の存立基盤そのものを損なうことになる。この事例は、“NGOの守護神”を売りにして、NGOの精神を否定するものでもある。
事例6:  任務遂行のための武器使用
シナリオ  「PKOで自衛隊が他国部隊とも協力して、負傷したNGO職員等を緊急輸送するため負傷者のもとに移動中、武装集団が道路を封鎖。妨害を排除しなければ人命が失われる。」
検討:  @停戦の破たんにより道路封鎖などが行われている場合、それを“人命救助の任務への妨害”として武力で排除すれば、それ自体、自衛隊が紛争に武力介入することになる。
 A国連PKOの「標準作戦規定」(SOP)では、合意された武装解除や兵力引き離し地帯の監視などPKF(平和維持軍)の任務遂行に当たり、「任務遂行のための武力行使」(use of force)を認めることもあるが、それはほとんど「自己防衛」と表裏一体のものであり、武力衝突に至るような場合は、PKO部隊の退避・退去や任務の中断を行う。
 B“人命救助”のために、より多くの人命を奪うというのは、PKOの自己否定になりかねない。敵意のない人道支援であれば、武装集団との交渉こそ必要で、合意が得られない場合は中断または別の迂回路・方法を探るべきだ。
 Cここでも“負傷したNGO職員等”と例示したのは、それを看板に「等」の兵士も含みうるという、ごまかしの話法。
事例7:  領域国の同意に基づく邦人救出
シナリオ  「某国でテロ集団による邦人および外国人の生命が脅かされる事案が相次いで発生。その国の治安当局は能力不足で、自衛隊が邦人の救出作戦を行うことに同意。」
検討:  @紛争を抱えた政府は、反政府勢力を“テロ集団”と呼ぶことが多いが、“テロ”の国際的定義は存在していない。政権の強権や腐敗で反政府運動が高まった場合、政権派と反政府派の衝突で危険にさらされる邦人=外国人を退避させる努力は当然、それぞれの国の政府がすべきだが、それが“テロ集団”に対する武力行使を伴うなら、自衛隊は政権側に立って武力介入したことになる。
 A現行の自衛隊法では、在外邦人の国外退避のために陸海空自衛隊による「輸送」ができることになっているが、それはあくまで武力行使を伴わない「退避支援」であり、武力による「救出作戦」ではない。
 B安倍首相は、母親や乳児の絵のパネルをかざして、“国民の命を守るため”と連呼したが、情勢悪化の兆候が出た段階から退避勧告やそのための手段、便宜の提供などに努めるのは当然で、それでも邦人が逃げ遅れたとすれば、政府の努力不足・失敗である(これは避難者輸送艦船の防護の事例にもあてはまる)。
V.  「武力の行使」に当たり得る活動=8事例
事例8:  邦人輸送中の米輸送艦の防護
シナリオ  「近隣で武力攻撃が発生し、米艦は公海上で攻撃を受けている。攻撃国の言動から、我   が国にも攻撃が行われかねない状況にあり、取り残されている多数の在留邦人の輸送が我が国だけでは対処しきれない。そこで米国が我が国の要請を受け、艦艇により輸送しているが、輸送艦は防御能力が低く、米国が防護を要請してきた。」
検討:  @軍事状況は“周辺事態”にあるが、こうした武力衝突の兆候がある段階から日本政府が   どのように在留邦人の避難をさせるかの作業について、まったくシナリオには含まれてい   ない。かつてのシミュレーションでは、韓国在留邦人数を3万人として、武力攻撃に至る前に2万人を自主的に退避させ、残りの1万人はソウル2、釜山1の空港に集め、飛行機またはフェリーなどで帰国させるという計画だったという。それがないまま、いきなり米艦艇による輸送が持ち出されている。
 A米国は戦闘中であり、加えて民間人を避難させるなら在留米国人を優先するだろう。日   本が要請したからといって、優先順位は変わらない。一方、他国民を輸送する余裕があるなら、その艦艇には米軍自身が護衛を付けるはずで、輸送艦艇は提供するが防護は日本に、というのは考えにくい。
 B邦人輸送に当たるのが「米艦艇」なら、収容能力は小さい。日本が攻撃されていないの   であれば、日本政府が攻撃国に「この船は民間人を輸送するので、攻撃するな」と通告・交渉すべきで、その保障が確保されない場合、戦闘が行われている海域を船で運ぶこと自体無謀になる。
 C安倍首相は、国会で「邦人輸送を頼むのは米艦だけとは限らない」、また、「防護する   のは邦人の輸送船だけでもない」と答弁した。邦人を輸送する(米国以外の)他国の艦船も、日本人以外の民間人を輸送する艦船も防護するというのである。“攻撃国”とそれらの国の関係はどうなっているかを問わず、自衛隊が武力行使しうるというのでは、戦火に油を注ぐようなもの。
事例9:  武力攻撃を受けている米艦の防護
シナリオ  「近隣で武力攻撃が発生し、米艦は公海上で攻撃を受けている。我が国への武力攻撃は    認定されないものの、行われかねない状況である。展開している多数の米艦の中には、補給や補修のために在日米軍施設・区域に出入りするものも含まれる。その中には防御能力が十分でない輸送艦や補給艦もあり、米国がこれらへの防護を要請してきた。」
検討:  @武力衝突の原因や経過はまったく度外視されている。米国による先制攻撃が原因で武力衝突に至った場合でも自衛隊が防護するというのでは、「集団的自衛権の行使」とはいえず、不法な戦争・侵略行為への加担となる。
 A“攻撃国”が奇襲し、武力も相当に優勢である場合にのみ、米艦が防護不十分なままに行動することになる。世界最強を誇る第7艦隊などが展開するなかで、米側をそうした状況に追い込みうるような回が存在するという想定は非現実的だ。
 Bそれが“将来の中国軍”を想定しているのなら、日本のこうした方針は軍拡競争を促す要素にしかならない。
事例10:  強制的な停船検査 
シナリオ  「近隣で武力攻撃が発生し、米艦は公海上で武力攻撃を受けている。我が国への攻撃は認定されていないが、攻撃が行われかねない状況である。武器等の物資を積んで攻撃国に向かっている疑いのある船舶がたびたび我が国周辺を航行しており、これらの武器により紛争が拡大し、米国の同盟国である我が国も攻撃を受け、国民の生命が犠牲になるおそれが極めて高い。米国がこのような船舶の強制的な停船検査を要請してきた。」
検討:  @日本が攻撃されていない(相手国には攻撃の意思が見られない)場合でも日本が米艦を武力で防護するなら、それ自体が相手国の攻撃を呼びこむことになる。相手国への軍事物資の輸送は、戦闘継続に不可欠な補給行為であり、これを阻止するのはまぎれもない参戦行為である。
 A停船検査は、航行の阻止、船舶の舎捕、積荷の没収、乗組員の拘束などを含むことになるから、船舶の旗国が日本の行動は不法行為として抗議し、外交関係の悪化も招きうる。
 B停戦に応じず、検査に抵抗した場合、自衛隊はその輸送船に武力攻撃を行うことになり、乗組員の死傷や輸送船の沈没などの重大な結果になりかねない。それは報復攻撃(相手国にとっての個別的自衛権の行使)の理由とされうる。
事例11:  米国に向け我が国上空を横切る弾道ミサイル迎撃
シナリオ  「ある国に駐留する米軍に対し、米国を巻き込む武力攻撃が発生した。攻撃国内の発射地点からグアムやハワイに向かう弾道ミサイルが我が国上空を横切ることが想定される。米国から迎撃要請があった。攻撃国は、米国とともに我が国を敵視する言動を繰り返し、早急に阻止しなければ我が国にも攻撃が行われかねない状況にある。」
検討:  @当初、“米本土に向かうと思われる弾道ミサイルの迎撃”も喧伝されていた。しかし、米本土に向かうには、日本上空を飛ぶのではなく、サハリンやオホーツク海を経由するしかないことが指摘され、この事例は引っ込められた。
 Aハワイやグアムに向かう弾道ミサイルは日本上空を飛ぶが、日本上空ではかなりの高空を飛翔し、これを迎撃するのは技術的にも難しい。また、発射地点が複数あれば、そのコースも変わり、迎撃ミサイルを搭載した自衛隊のイージス艦は広い海域に展開しておく必要がある。まして、弾頭がある程度高度を下げる落下コースで迎撃しようとすれば、自衛艦はハワイやグアムの周辺に待機しなければならない。自衛艦は、攻撃されるかもしれない日本の防衛を放棄することになる。
 Bハワイやグアムを攻撃する国が、より近接した在日米軍基地には弾道ミサイルを撃ち込まないという想定自体が、非現実的。軍事論としては、在日米軍基地へのミサイル攻撃の方がはるかに可能性が大きく、その場合、ハワイやグアムに向かうミサイルどころではないはず。
事例12:  弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
シナリオ  「ある国に駐留する米軍に対し、米国を巻き込む武力攻撃が発生し、戦闘が急速に発展しつつある。米国のイージス艦と我が国の艦艇が警戒に当たっている。イージス艦は、弾道ミサイル対処を行っている際は、航空機・対艦ミサイルから防御する能力は相当に低下する。米国が米艦の防護を要請してきた。攻撃国は、米国とともに我が国を敵視する言動を繰り返し、早急に阻止しなければ、次は我が国にも攻撃が行われかねない状況にある。」
検討:  @米国のイージス艦保有数は84隻だが、自衛隊は6隻。しかも、イージス艦はミサイル、航空機などの複数目標に同時対処できるというのがセールスポイントだ。自衛隊のイージス艦より性能が高い米国のイージス艦が、防御能力不足を理由に自衛艦に防護を要請するというのは、米軍の本音か、それとも自衛隊を戦争に組み込む口実か。
 A第三国に駐留する米軍が戦闘に巻き込まれた場合、攻撃国が“次は日本も攻撃”と考える最大の理由は、日本が“いかなる場合も米国と共に戦う”と宣言し、その態勢をつくっていることになろう。
事例13:  米本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戟を行うときの米艦防護 
シナリオ  「米本土が、我が国近隣の攻撃国から大量破壊兵器を搭載した弾道ミサイルによる大規模攻撃を受けた。米国は、我が国近隣で攻撃国に対する作戦を開始した。攻撃国は、米国とともに我が国を敵視する言動を繰り返し、早急に阻止しなければ、次は我が国にも攻撃が行われかねない状況にある。展開している多数の米艦の中には、補給や補修のために在日米軍施設・区域に出入りするものも含まれる。その中には防御能力が十分でない輸送艦や補給艦もあり、米国がこれらへの防護を要請してきた。」
検討:  @これは戦略ミサイルによる最終戦争のシナリオである。この場合、総力戦になり、攻撃国に近接する在日米軍基地などの駐留米軍は、同時に攻撃対象になるだろう。“我が国に対する攻撃は発生していない”から、米国の輸送艦や補給艦を防護できるという“余裕”もないはず。
 A米軍の戦争体制に深く組み込まれている自衛隊は、当初から攻撃対象になり、「集団的自衛権」どころか、個別的自衛権の行使で大わらわになろう。
 Bこのような戦争が起これば、米本土も攻撃国も、もちろん日本も破壊しつくされよう。米ソ冷戦時代、全面的な核戦争のシナリオは、自衛隊では対処できないとして、“ない(考えない)”ことになっていた。米中戦争のシナリオもこれに近い。政府の事例で想定しているのは、北朝鮮などの数発のミサイル攻撃で、それ以外の戦闘では自衛隊の通常戦力でも対処可能という、都合のいい“机上の想定”である。
事例14:  国際的な機雷掃海活動への参加
シナリオ  「我が国の船舶が多数航行し、輸入原油の大部分が通過する重要な海峡(たとえばホルムズ海峡)の近隣で武力攻撃が発生した。米国をはじめとする各国は軍事行動を開始した。攻撃国とそれに同調する国は反発し、機雷が敷設され、海上交通路が封鎖された。国連および各国から、国際的な機雷掃海活動への参加要請があった。」
検討:  @戦闘地域、特に機雷が敷設された海域をタンカーなどが平常通り航行することはありえない。船主も乗組員も、そんな海峡を通過するような航行は拒否するだろう。“多くの民間船舶に触雷による被害が生じており、犠牲者も発生した”という想定は、敷設国が“機雷など敷設していません”という顔をしていて、各国がそれを信じ、探知もできていない場合だけである。
 A機雷の敷設は、武力行使(戦争)の一形態である。それを経済的理由や民間人の「付随的被害」を理由にしても、それを除去するのも戦争行為である。敷設国にとっては、戦争中の掃海作戦は“敵国への加担”(参戦)でしかない。自衛隊は、敷設国の敵国に「集団的自衛権」を行使することになろう。当然、掃海作戦に従事する部隊をこは敷設国からの攻撃がありうる。
 B国連安保理が掃海を容認または促す決議をした場合、それへの参加は、集団的安全保障措置における日本の武力行使となる。集団的安全保障措置への参加による武力行使は、「国際紛争解決のための武力行使」となり、憲法上できないはずではなかったか。
事例15:  民間船舶の国際共同護衛
シナリオ  「事例14の場合、米国を含む多くの国の何百隻もの民間船舶が攻撃により被弾した。軍事行動に参加している各国は、軍の艦艇により共同して民間船舶の護衛を行っており、それには我が国船舶も外国船舶も含まれている。各国から、この国際的な共同護衛活動への参加要請があった。」
検討:  @1隻または数隻ならまだしも、“何百隻もの民間船舶が被弾”とは、どういう戦争か?また、船長はどんな判断をしていたのか? 各国政府は、そんな規模の被害が出るまで、自国の船舶に注意も情報提供もしなかったのか? 理解に苦しむ“想定”である。
 A武力紛争を起こした当事国に関与していない各国が、武力紛争の終結を待たず、平常の民間船舶の航行を継続させるために共同の護衛作戦を行うというのは考えにくい。ありうるとしたら、“民間船舶への攻撃”を理由として攻撃国への武力攻撃をするための“演出”ではないか。日本は「危険な海域には近寄るな」と言うべきであって、そんな形での軍事介入はすべきではい。

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