憲法を生かす会関東
憲法を生かす会関東連絡会ニュース
第9号    2014年12月1日  


日米防衛ガイドライン「中間報告」と戦争法制


□ □ □   筑紫建彦   □ □ □

 「日米防衛協力のための指針」(以下、日米防衛ガイドラインまたはガイドラインという)改定にむけた「中間報告」が10月8日発表された。「中間報告」は、当初9月中旬までに発表されると言われていたが、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定(7月1日)を受けた国内関連法整備に関する政府内部、与党間の議論が「難航」して遅れたと見られる。また「最終合意」も年明け以降にずれ込んでいる。
 本稿では、「中間報告」について検討・批判し、7月1日間議決定撤回、日米防衛ガイドライン反対、「戦争法案」上程阻止の闘いにつなげていきたい。

 1.日米防衛ガイドラインとは

 日米防衛ガイドラインとは、日米安保条約の規定などに基づく日米安全保障協議委員会(SCC)、いわゆる「2プラス2」(外務・防衛担当相の会議)による「政府間合意」である。日本政府は、安保条約の枠組みのもとでの研究・協議の結果に過ぎず、権利・義務を伴う条約ではないから国会批准は必要ないと言うが、ガイドラインで合意したことは守らなければ「日米同盟」は壊れるとか、ガイドラインを実施するためにも国内法の改定が必要とも言うから、政治的には事実上、義務として履行を約束したものとなる。
 なお、アメリカ政府の公式文書では安保条約と日米防衛ガイドラインは同格に扱かわれている。つまりアメリカ側は、「約束」という認識に立っている。
 現行ガイドライン(1997年改定)では、「日米安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは変更されない」、「指針及びその下で行われる取組みは、いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置を取ることを義務づけるものではない」とわざわざ書き、今回の「中間報告」にも、「いずれの政府にも法的権利または義務を生じさせるものではない」とあるが、名目と実体の使い分けである。
 アメリカからすれば、安保条約で米軍に日本の施設・区域を提供するとなっている限り安保条約を改定する気はさらさらない。条約には手をつけないで米軍の活動及び米軍と自衛隊の協力関係が拡大できればいいのだ。
 日米ガイドラインは1978年に作られ、1997年に改定、今回は再改定となるが、その内容と範囲は安保条約の枠をはるかに超えている。位置付けも曖昧な「政府間合意」をもって安保条約を実質的に変えていくために使われてきたのが日米防衛ガイドラインである。

 1978年ガイドライン
 1978年ガイドラインは、日本が攻撃されたとき(日本有事)にどう共同で対処するか、すなわち、あくまで日本防衛のための共同作戦という枠組みが基軸になっている。「日本以外の極東における事態」、いわゆる安保条約の極東条項に該当する部分については、随時に協議するとしか書かれなかった。

 現行ガイドライン (1997年改定)の背景
 1978年ガイドラインが1997年に改定され、当時は「新ガイドライン」と言われた現行のガイドラインができた。この背景には、ソ連崩壊・冷戦構造の終焉に対応するアメリカの戦略再構築の問題や、日米安保「再定義」(1996年橋本−クリントン政権)の問題があるが、より直接的には北朝鮮の核開発疑惑を理由にアメリカが先制攻撃を準備したこと、つまり朝鮮半島有事(第2次朝鮮戦争)の危機が浮上したことである(93〜94年)。
 この時アメリカは日本に対して全面的な戦争協力を求め、1000項目以上にわたる具体的な要求をしてきたと言われる。日本政府(当時は、宮澤→細川→羽田と目まぐるしく内閣が替わった)は密かにそれらを検討したが、憲法9条がありアメリカの要求には応えられなかった。結局、この朝鮮半島核危機は、土壇場でカーター元大統領が訪朝して回避されたが、日本が攻撃されていない事態で、日本周辺、つまり朝鮮半島の有事に際し米軍にいかなる協力ができるのかが迫られた日本政府は、憲法を変えずに実態的にどこまで踏み出せるかという日米協議から、1997年ガイドラインが作られた。

 現行ガイドラインの桂は「周辺事態」対処
 現行ガイドラインでは、「平素から行う協力」として、「日本に対する武力攻撃に対する共同作戦計画」や「周辺事態への相互協力計画」は、「包括的メカニズム」において行い、それを緊急事態で運用するための「調整メカニズム」を構築することが新しく盛られた。抽象的な「メカニズム」という言葉だが、防衛省と国防省、自衛隊と米軍、その他の関係省庁や民間機関が関与した「作戦委員会」のようなものを平素から作っておこうということだ。その中身や動きは公表されないまま現在にいたっているが、「メカニズム」で括られる恒常的な組織が設置されていると見ておくべきだ。
 「日本に対する武力攻撃に際しての対処」では、「包括的メカニズム」「調整メカニズム」の中で準備しておく作戦行動の対象がかなり具体的に列挙されている。
 現行ガイドラインで初めて出てきたのが朝鮮半島有事を念頭に置いた「周辺事態」だ。周辺事態とは「地理的概念ではなく、事態の性質に着目したもの」というわけのわからない説明と議論をしながら、この中で日本有事の場合における自衛隊と米軍の協力関係を対外的に拡大する形で「周辺事態」への共同対処が具体的に決められた。これには避難民の問題、非戦闘員の退避の問題まで含まれている。
 そして日本が攻撃されていない事態においても、日本がアメリカの軍事作戦に協力する内容として、自衛隊の基地だけではなく民間の空港・港湾の使用や、「後方地域支援」も行うことが盛り込まれた。
 後方地域支援は「主として日本の領域で行われるが、戦闘行為が行われている地域とは、一線を画される周辺の公海とその上空で行われること」とされたが、「一線を画される」とは言っても、軍事的には「前線」に対する「後方」でしかないから後方支援を言い変えただけである。日本が攻撃されていない事態でも、自衛隊が<そこまで>進出して米軍を支援する共同作戦の枠組みが決められたのである。
 しかし、現ガイドラインができた1997年には、それに基づいて自衛隊が動けるための国内法がなかった。そこで2年後の1999年に「周辺事態法」が強行成立させられた。国内法に基づかず、それを超えた合意を政府がアメリカと結んでしまってから国内法が作られるというもので、立法上は悪例だとされている。こうして安保条約の枠は突破された。アメリカのアフガン攻撃(2001年)では、自衛隊がインド洋で米艦に給油を行ったが、その「出発点」はここにあった。さらに「武力攻撃事態法」(03年)、「国民保護法」(04年)など一連の有事法制が作られてきた。

 「周辺事態」を削除
 「中間報告」の最大の特徴の一つは、「周辺事態」という文言が消えたことである。周辺事態とは、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(周辺事態法1条)と定義されてきたが、その「周辺事態」という地理的色彩を帯びた概念が取り除かれた。現行ガイドライン改定のときにあれほど大騒ぎして「周辺事態」をひねくりだしたが、「グローバル」にすればどこでもできるので、「周辺事態」そのものを捨ててしまうおうということだ。日米共同の軍事行動の範囲も、日本「周辺」から「切れ目なく」世界に向けられたものになっていくということを意味している。

 2.安倍内閣の閣議決定を踏まえたガイ ドライン改定

 7月1日間議決定(正式名称は、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」)は、武力行使の「新3要件」を決め、集団的自衛権の行使、国連の集団的安全保障措置、そしてグレーゾーンと呼ばれる事態に「切れ目なく」対処するとしている。「新3要件」とは、@我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、Aこれを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない時に、B必要最小限度の実力を行使すること、である。
 この閣議決定と今回のガイドライン改定はメダルの表裏の関係にある。「中間報告」では「指針の見直しは、この閣議決定の内容を適切に反映」すると述べているからである。

 グレーゾーン概念の投入
 グレーゾーン事態と呼ばれる概念は、例えば外国からの武装した民兵集団のような組織が離島に上陸して居座ったというような場合だと言う。民兵集団は軍隊ではないから他国の意思による侵略=武力攻撃をされたとは言えない。このようなケースは外国人による犯罪行為だから警察や海上保安庁が対処する。それで足りない時に自衛隊が出動することがあるが、それはあくまでも警察権行使の範囲内で警察や海上保安庁を支援する関係であるというのが国内法の枠組みになっている。ところがグレーゾーン事態への対処は、警察力の行使の範囲を飛び越えて直接に自衛隊が出動することを想定している。
 グレーゾーン事態への対処について、誰もが念頭に浮かべるのは尖閣諸島の問題だろう。尖閣諸島に漁船に乗った武装集団が上陸してしまったときに自衛隊が出動して武力で鎮圧するという事態にもなりかねない問題なのである。武装集団が相手だから致し方ないと思われるかも知れないが、それは違う。
 日中平和友好条約(1978年)2条には、「相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えない」という憲法9条と同じ趣旨が規定されている。両国間に紛争が起こった場合に、両国とも軍隊は出さないと条約で約束しているのだ。だから、尖閣諸島をめぐる現在の日中間の軋轢の中でも、人民解放軍も自衛隊も出動しないで日本の海保と中国の海警が「押したり引いたりしている」のが現状だ。

 【コラム】 政府が「新3要件」に基づいて海外で武力行使をする決定をしたとき、その判断根拠となる情報は果たして公開されるのかは、12月10日から施行される秘密保護法にかかわる問題だ。安倍内閣は、(内閣府に置かれる)独立公文書監理官に権限を付与すると国会で答弁したが、同時に、大臣は理由を疎明して情報提供を拒むことも可能だとも言っている。秘密保護法の規定ではそうなっており、国家安全保障上の重要な情報だから開示できないとされよう。また、武力行使の決定を行う国家安全保障会議(NSC)の情報の秘密指定は首相が行うが、その指定の適否をチェックするのも首相となる。これで「独立した客観的なチェック」が行われるとは、誰も思わないだろう。

 もしグレーゾーン事態への対処で、海上保安庁を飛び越えて自衛隊が出て行ったらどうなるか。中国側はおそらく日中条約違反だと言って、これに対抗する権利を持つと主張しかねない。そうなれば海上自衛隊と人中国の海軍が正面から対峙するという事態になる。ことは海上だけでなく当然にも制空権の確保も問題になるから、航空自衛隊と中国空軍が飛び交うという深刻な事態になりうる。なので、グレーゾーン事態への対処は簡単に考えるべきではない。しかし安倍内閣は、グレーゾーンからはじまって集団的自衛権の行使まで「切れ目のない防衛体制を作る」と考えているから、その思考方式や論理が、実際の事態プロセスと切り離され、非常に危険な落とし穴になる可能性がある。

 国連の集団的安全保障措置での自衛件の活動拡大
 集団的安全保障については、いろんな事例が列挙されていて非常にわかりにくいが、要するに、集団的安全保障措置であれば、「現に戦闘が行われていない場所」ならどこでも自衛隊は活動できるということだ。後方地域とは戦闘地域とは一線を画す地域だとか、小泉首相は、イラク派兵のときに「自衛隊がいるところが非戦闘地域だ」と言い逃れしたが、安倍内閣ではそんな方便も使わない。「後方地域支援」「非戦闘地域」という言葉も捨てて「現に戦闘が行われている場所」つまり相当に局限された場所では行わないが、<その側まで>はできるようにするとしている。
 また現行の後方支援では、自衛隊は武器・弾薬は提供しないと法律に書かれているが、今後の法改定では、直接戦闘に使用されなければ武器・弾薬の類も提供できるようにし、限りなく武力攻撃との一体化を進めていこうとしている。
 国連PKOで問題になった「駆けつけ警護」の問題にも踏み込もうとしている。「近く」にいる他国部隊から武装集団に襲われたから助けてくれという連絡がきても、現行では国際的な武力紛争での武力行使になりかねないので、自衛隊は「駆けつけ警護」はできない。安倍内閣は、これを可能にするためにNGOや国連職員の警護なども持ち出して「駆けつけ警護」が必要だと主張している。しかしNGOは、その基礎である中立性や地域住民の信頼も失うことになるので、軍隊に守られて活動することは懸命に避けてきたのであり、NGOからも批判の声が上がっている。
 PKOでは任務遂行のための武器使用が問題になる。PKOは本来、紛争当事者同士が停戦合意をして戦闘が収まっているが、双方とも武器を保持して睨み合っているという状況の中で、停戦状態を維持し、さらに安定した和解に至るための緩衝材として国連のもとで他国の軍隊が入るということが原則である。停戦ラインが定められた場合には、停戦ラインが破られないように軍事監視団が入る、停戦合意の中に武装解除が入っていれば、PKO部隊がそれを遂行することにもなる。
 停戦監視や武装解除にあたって、停戦合意に違反する者に対して武器を使用してそれを止めるという問題も出てきうる。止めようとしたら撃ってきた。だからこれに反撃して相手を鏡圧するなりして武器を取り上げる、あるいは停戦ライン後方に引かせるという事態が起こり、武力紛争になるかもしれない。だから、PKO協力法では、武力行使と山体化する恐れがある「任務遂行のための武器使用」はしないことになっている。しかし、安倍政権はこれも解除しようとしている。

 邦人救出の問題
 これはすでに自衛隊法改定で、外国で邦人を救出する必要があるときに自衛隊が輸送機を出す、自衛隊の艦船で避難する日本人を運ぶことができるようになっている。ただし地元の武装勢力と衝突するかもしれないという問題もあって、陸自部隊を派遣することまではやらないということになっていた。しかし安倍内閣はそうした制限を外し、邦人救出作戦で陸自部隊による武器使用もできるようにしようとしている。
 さらに、私は「代行治安」と呼んでいるが、相手国の政府が弱い時には、自衛隊がその国に代わって治安維持をしてやるという問題がある。相手国政府から要請された、相手国と合意があればいいできるという。そもそも自国の治安が維持できないような政府が助けてくれと言ったからといって、その国に自衛隊が入って行くことになれば、クリミアに対するロシアの侵攻やベトナム戦争でのアメリカの介入などと非常に接近した議論になり、他国の内戦に自衛隊が介入し、紛争当事者になっていくことになりかねない。
 以上のさまざまなケースに共通していることは、安倍内閣が、集団的安全保障措置として自衛隊が海外に出た時の「武器の使用」は、「武力行使」にはあたらない、憲法が禁じている「武力行使」とは違う、だから憲法に違反しないという勝手な論理を強弁していることである。国連文書などでは「武器の使用」と「武力行使」は区別されず、いずれも「Use of Force」である。しかし安倍内閣は、「Use of Force」ではなく「Use of Weapon(武器)」で、武器を使うだけで武力を行使するのではないから「武力の行使」を禁じた憲法に違反しないと平気で言う。
 PKO協力法の改定案にどこまで書きこむか、PKO協力法以来国会で長い間議論され、政府が答弁してきたことと齟齬をきたすような内容が盛り込まれるとすれば、どう書かれるか、注目しておく必要がある。

 「切れ目なく」行う措置
 「中間報告」は、「切れ目のない安全保障法制の整備のための2014年7月1日の日本政府の閣議は、日本国憲法に従った自衛隊の活動の拡大を視野に入れている。指針の見直しは、この間議決定の内容を適切に反映し」、「見直し後の指針は、日本に対する武力攻撃を伴う状況及び、日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、日本国憲法の下、2014年7月1日の閣議決定の内容に従って日本の武力行使が許容される場合における日米両政府間の協力について詳述する」と書いている。すでに見たように7月1日閣議決定の内容は、グレーゾーンから集団的安全保障措置、集団的自衛権の行使までに及んでいるが、それら全部にわたって反映するとハツキリ言っているのである。
 「切れ目のない」とは、「境目がない」「どうにでも動きうる」とも解釈できるような流動的なものであろう。新防衛大綱(2010年)で「基盤的防衛力構想から動的防衛力」としてその概念は出てきていたが、「中間報告」では7回も使用されているのが特徴だ。
 そして日米両政府は、平時から緊急事態までのいかなる段階においても「切れ目のない形で」とる措置として具体的に以下12項目が挙げられている。
 @情報収集、警戒監視及び偵察、A訓練・演習、B施設・区域の使用、C後方支援、Dアセット(装傭品等)の防護、E防空及びミサイル防衛、F施設・区域の防護、G捜索・救難、H経済制裁を確保するための活動、I非戦闘員を非難させるための活動、J避難民への対応のための措置、K海洋安全保障。
 「施設・区域の使用」は、安保条約に書かれているが、ガイドラインを履行しようとすれば、基地の縮小・撤去が課題の沖縄でも新たな基地の使用が可能になりうるだろう。

 【コラム】 ハンス・ケルゼンという公法・国際法・政治学の学者(オーストリア出身でオーストリア共和国憲法を起草。1940年以降はアメリカに移り政治学者になった)は、国連憲章51条が例外的措置として集団的自衛権の行使を認めたことは国連憲章の基本ガ崩れるという批判的な指摘を1948年当時すでに行っている。国連は本来、国際紛争を武力では解決しないことが前提で作られている。どうしても武力紛争ガ起こったら安全保障理事会が責任を持って解決するという枠組みになっている。とこうが例外措置として国連憲章51条に集団的自衛権の行使を認めることが入ったために、国際紛争は安保理だけが解決への権限を持つという基本が崩れ、国連の加盟国はそれぞれ勝手に、個別的であれ集団的であれ自衛権を行使できるのであれば国連憲章が崩れるではないかという批判だった。
 たとえば、A国とB国が争ったときに、B国は日本とアメリカと密接な関係にある国であり、日米はB国を支援して軍隊を出す。一方のA国には中国とロシアが密接関係にあり、中ロがA国を被害国であるとみなした場合には、中ロが集団的自衛権の行使として軍隊を出すことが可能になる。日米と中ロのどちらも集団的自衛権の行使と称してぶつかることになる。安保理の常任理事国が紛争当事者になってしまった場合、安保理は解決能力を失う。大国間が止めようと言わない限り、その戦闘は収まらないことにもなる。

 「アセット(装備品等)の防護」とは、安倍首相がさかんに言っていた、米艦船の防衛も含まれる。単に物品を守ってあげると考えたら大間違いで、戦闘中の米軍のさまざまな兵器、ミサイルから飛行機や艦船までぜんぶ入る。それを自衛隊が防護するということになれば、実態は戦争に加担することになるが、「装備品等の防護」としか善かれていない。
 「施設・区域の防護」とは、米軍基地の防護である。いままでの安保条約の解釈では、日本にある米軍基地が攻撃された場合は、当然にも日本の領域が攻撃されたのとダブるから個別的自衛権の行使として日本防衛のために自衛隊は行動する。安保条約に含まれていることを改めて書く意味は何か。また、どういう表現になってくるか注目しよう。
 「海洋安全保障」では、ホルムズ海峡における機雷除去も含まれる。ホルムズ海峡は、一番狭いところに公海はなく、オマーンとイランの領海になるが、そこに日本の自衛隊が出かけて行って機雷除去をする。安倍政権は、紛争が終結している以前でもやると言っているから、自国を守るために機雷を敷設した国からすれば利敵行為となる。「海洋安全保障」にはソマリアの海賊対策も入るが、ここでのポイントは機雷掃海の問題だろう。
 1991年の湾岸戦争の後に自衛隊はペルシア湾に掃海艇を派遣したが、当時は戦争が終わった後だから、海に浮遊しているごみを処理するのと同じだという理屈だったが、今回は戦争中であっても行くということであり、前提条件が大きく異なる。日本は公然と参戦国になることになる。すでにやってきたことだからと騙されてはならない。

 集団的自衛権の行使をめぐる思惑
 「中間報告」には、「集団的自衛権」という文言は直接には登場しない。しかしすでに見たように、「日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、日本国憲法の下、2014年7月1日の閣議決定の内容に従って日本の武力行使が許容される場合」と書かれている。したがって、ガイドライン改定の「最終報告」では、集団的自衛権の行使に伴うグローバルな海外での戦争を前提としたものになっていくことは明らかだ。どう「詳述」されるか注目しなくてはならない。
 アメリカ側は、日本の集団的自衛権行使を要求してきたが、あくまで米軍のリバランス戦略の中で自衛隊が協力することを基本にしている。ガイドラインでどう書くにせよ、アメリカは日本の独自行動には警戒心がある。とくに中国と韓国は日米防衛ガイドラインについて非常に警戒しているから、「中間報告」を発表する前日に、アメリカの交渉担当者が韓国に行って説明している。中国に対しても非公式におそらくシグナルは送っているだろう。ところが日本政府は、アメリカが「密接に関係する国」であることは当然だが、アメリカだけに限らない、ともしている。法律論的には、アメリカでない「密接な関係にある」国に対しても日本独自に集団的自衛権の行使ができるという構造になっている。書かれていないことにも注意しながら検討する必要がある。
 その文脈からすれば日本側から提起したと思われる「敵地攻撃能力」については、アメリカ側の意向で「検討課題」に棚上げされたという新聞報道の記事がある。「敵地攻撃能力」など認めたら韓国、中国が大騒ぎするからアメリカが止めたということかもしれない。
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 「戦争関連法案」の国会提出は2015年度予算成立後といわれ、国会審議の山場は、統一自治体選後の(15年)5〜6月と思われる。それに向けて、運動の発展と反対世論をひろげる闘いはこれからが正念場になる。

本稿は、10月25日の憲法を生かす会関東連絡会学習会での筑紫さんの報告をまとめたものです。
 
   
解釈で9条壊すな!実行委員会年末大講演会
 ガイドライン改定反対!
     「戦争する国」を止める!
講演:戦争法案とガイドライン
 半田滋さん(東京新聞論説兼編集委員)
コメント 清水雅彦さん(日体大教授・憲法)
とき:12月20日(土)18:30〜
ところ:文京区民センター3A
参加費:500円
 主催:解釈で憲法9条を壊すな実行委鼻会


 茨城     憲法の集い(11月3日) 
        内田雅敏さん(弁護士)が講演
 
 平和憲法を破壊する閣議決定                                   
−靖国参拝と集団的自衛権行使容認に通底するもの

 11月3日(祝)水戸市の県民文化センター分館において、「憲法を生かす会・茨城」と「茨城平和擁護県民会議」の共催で開催された「平和憲法の集い」で、弁護士で戦争をさせない1000人委員会事務局長の内田雅敏さんが講演し、170名の市民、労働組合員、学生らが熱弁に聞き入った。以下は、内田弁護士の講演を編集者の責任で要約したもの。

○安倍政権の安保政策
 昨年から今年にかけて行われた安保政策の大転換は、安倍首相個人の考えではなく、アメリカが求めてきたもの(14年前のアーミテージ報告)の具現化である。アーミテージ報告は日本に対し「弾力性のある防衛政策」−すなわち、機密保護法制の整備、集団的自衛権行使による日米協力の強化、武器輸出の解禁等−を求めてきたものであった。この間の動きと見事に一致している。

○これまでの日本政府の歴史認識
 憲法前文にある考え方は、1972年9月の日中共同声明、1985年10月の中曽根国連演説にも引き継がれている。日中共同声明は『日本側は、過去において戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことを痛感し深く反省する』と前文で謳い、第5項で『中国は日本に対する戦争賠償を放棄する』と、第6項において『日中政府は、全ての紛争を平和的手段によって解決し…』として反覇権主義の立場を明確にしている。
 あの(!)中曽根でさえ国連演説において、『1945年6月26日、サンフランシスコで国連憲章が署名された時、日本はただ一国で40以上の国を相手に絶望的な戦争を戦っていました。戦争終結後、我々日本人は超国家主義と軍国主義の跳梁を許し、世界の諸国民と自国民にも多大な惨害をもたらしたこの戦争を厳しく反省しました』と言わざるを得なかったのである。これが国際社会に対する日本の立場であり、政府の歴史認識だったのだ。

○靖国イデオロギーをどう克服するか
 靖国神社は骨が埋められているわけでもなく、勝手に招魂して命(みこと)として祀ってあるもの。この無断合祀による戦死者の魂独占の虚構こそが、靖国神社の生命線だ。追悼施設ではなく顕彰施設なのだ。ただ、その愚劣さを訴えても問題は解決しないだろう。戦死者遺族の感情があるからだ。戦没者追悼を中韓が批判したことはない。また、A級戦犯合祀が問題の核心なのではなく、靖国の「聖戦」史観こそが問題なのだ。私個人としては、すべての戦没者を追悼する国立施設をつくる必要があると考えている。

○集団的自衛権行使でどうなるか
 集団的自衛権行使容認によって自衛隊を米軍再編に組み入れたいアメリカではあるが、安倍の靖国参拝は戦後世界秩序への挑発であり、その歴史修正主義にはアメリカも懸念を表明せざるを得なかった。対米従属の強化と戦後世界秩序に対する挑発という安倍の二律背反と言えるものだ。
 集団的自衛権行使で海外に自衛隊を出せば摩擦は拡大するだろう。日中、日韓の関係改善にもつながらない。戦闘部隊、後方支援部隊など、これまでと全く違ってくる。軍需産業も肥大化するだろうし、秘密保護法等により国民の知る権利、表現の自由などが大幅に制限される事態を招くだろう。自衛隊だけでなく国民全体の問題となる。閣議決定にある3要件など歯止めにならない。閣議決定は憲法を破壊するものであり、靖国イデオロギーと集団的自衛権行使は根っこのところでつながっている。
 日本の安保政策に求められているのは、かつてのドイツがそうしたように「すべての隣国が友人となる」政策だ。戦後の出発点に戻ることが今ほど求められている時はない。

 神奈川     オスプレイ横須賀に飛来
 
  10月20日、「本日、米側から米海兵隊のMV−22オスプレイ1機が、横須賀海軍施設の状況を把握するため、10月25日(土)に同施設に飛来する可能性があること、並びに、これに伴い、同月24日(金)及び25日(土)に厚木飛行場に立ち寄る可能性がある」という防衛省からの情報提供が横須賀市にされました。
 横須賀市は、「本日、防衛省南関東防衛局から、横須賀海軍施設へのMV−22オスプレイの飛来について、情報提供がありました。オスプレイについては、日本政府として安全性を十分に確認し、日本国内における飛行運用についても、平成24年9月の日米合同委員会において、地域住民に十分配慮がなされ、最大限の安全対策が採られることを、日米両国間で合意していると承知しています。また、日本政府においても、ティルト・ローター機の導入を計画していると聞いています。オスプレイは、従来機に比べ、災害救援・人道支援活動においても優れた性能を有しているとのことであり、本市のように半島に位置し、飛行場が無く、災害時に交通の分断等が懸念される自治体にとって、災害救援等においての重要性については認識しているところです。一方で、オスプレイに限らず、航空機等の運用にあたっては、引き続き、地域住民に十分配慮し、安全の確保については万全を期すよう求めてまいります」という「市長コメント」を発表しました。
 翌日21日、吉田雄人横須賀市長に対して神奈川平和運動センター・三浦半島地区労働組合センター・非核市民宣言運動ヨコスカ・原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会の4団体が、緊急申し入れ(要旨は下記)を行ないました。
 オスプレイは、過去に多数の墜落事故を起こし、去る10月3日にも、ペルシャ湾上で、搭乗員1名が死亡する事故を起こしています。また、昨年12月には、米軍ヘリが、三浦市の埋め立て地に墜落し、その原因は整備不良という人為的ミスであることが明らかになっています。そして、オスプレイは、オートローテーション機能がないという、航空法にも違反した欠陥機です。そして、横須賀基地はもともと航空基地でもなく、周辺は横須賀の中心市街地に隣接した極めて人口密集地で、一旦事故が起これば、大事故に繋がりかねません。
 従って、私達は緊急に、市長に以下の申し入れをし、また質問に対する回答を求めます。
 1.危険なオスプレイの横須賀基地への飛来を中止するよう、国及び米海軍に申入れされたい。
 2.なぜ、海兵隊のオスプレイが、米海軍横須賀基地に来るのか、横須賀基地の状況把握とは全く意味がわからず、必要ないと思われるので、その日的について照会されたい。
 3.今回のオスプレイの飛来の話しはいっから横須賀市に話があったのか(即刻周到な受け入れのコメントを出すのは、事前に話があったとしか思えないが)
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 しかし申し入れにもかかわらず、10月25日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の新型輸送機オスプレイ1機が25日午前、横須賀市に初めて飛来し、米海軍横須賀基地のヘリポートに着陸しました。米軍側は「海軍施設の状況把握のため」と説明している。オスプレイは午前10時頃、横須賀基地上空に姿を見せ、旋回しながら、回転翼部分を飛行機と同じ「固定翼モード」から「ヘリコプターモード」に転換させ、ゆっくりと同基地に降り立った。
 県や市に防衛省南関東防衛局から入った情報によると、午前9時30分ごろ、横田基地をオスプレイ2機が相次いで離陸し、そのうち1機が横須賀に飛来した。もう1機は厚木基地の上空を飛行したという。横須賀に着陸したオスプレイは、午前11時11分に横田基地に向けて飛び立った。オスプレイ飛来に市民は横須賀中央駅などで抗議活動をしました。
 オスプレイは、1991年6月にデラウェア州の工場で試作機が初飛行の離陸時、制御不能で墜落しました。その後毎年事故が起きています。
「未亡人製造機」とも言われていて、本国のアメリカでは飛行できていません。こんな、危険な欠陥機を日本の空に飛ばしてはなりません。粘り強く反対行動を続けましょう。(吉)
 軍事予算による「ローン地獄」を許すな

  【安保の完全グローバル化】
 7月1日の集団的自衛権容認の閣議決定の強行に続いて、10月8日には日米ガイドラインの再改定の中間報告が取りまとめられた。その具体的な内容についての論評の詳細は別稿に譲るが、一言で言えば,地理的・時期的限定を外して日米軍事同盟を完全にグローバル化し、日本が「いっでも・どこでも」海外の紛争に武力介入できるようにしようというものである。
 報道によれば、その関連法制は次期通常国会に出される見通しとのことではあるが、法整備に先行した実質的な内容の先取りが既に防衛大綱や予算等に盛り込まれ、着々と既成事実化が進められている。また、この臨時国会では「特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法」なるものが10月7日に閣議決定され、閣法187−14号として提出されていることも無視する訳にはいかない。

 【膨らむ軍事予算】
 まず、この冒頭第1条の趣旨規定では「現下の厳しい財政状況の下で防衛力の計画的な整備を行う」ことを目的に「長期契約により」「経費の縮減」を図るとしている。しかし、財政が厳しいという自覚症状があるなら、なぜ義務的経費等を除き原則△10%というシーリングを無視し、対前年度3.5%増で過去最高の5兆円を超す要求ができるのだろうか。少なくともイージス艦建造費2,274億円や哨戒機Pー1購入費3,781億円など、無駄遣いとしか思えない。
 もっとも、上記の金額は政府が最終的に業者に払う契約べ−スのもので、現実には何年かの分割払いとし、初年度には頭金のみが予算化される。
 2015年度の概算要求で装備品の調達等の物件費として予算化されたのは2兆7,940億円だが、この他に2016年度以降に予算化される「ツケ払い」の部分が2兆5,766億円も控えている。しかも、その2兆7,940億円のうち実に1兆7,598億円が2014年度以前に契約したものの「ツケ払い」で占められているのである。そして、この「ツケ払い」の部分が年々膨らみ、2015年度概算要求では前年度より2割以上も増えている。これは、いつかは予算化しなければならないものである以上、後年度の財政を大きく圧迫する要因となる。

 【長期延べ払いで兵器調達】
 そこで浮上してきたのが「ツケ」で先送りする部分をもっと増やそうという今回の法案である。現在、財政法では、こうした「ツケ」である「債務負担行為」について原則5年以内と定めているが、これを10年まで延長しようというのが今回の法案の第2条であり、実は、2015年度の概算要求は既にこれを織り込んだものとなっている。
 しかし、当面の見かけの金額を小さく見せることはできるかもしれないが、ローンの返済で火の車という構造が改善される訳ではないし、附則で現中期防衛計画期間中の時限立法としているものの、一度膨らんだ負債は簡単には解消されない。
 一応は、契約期間が長期に亘れば全体の規模も大きくなりスケールメリットが生かせるからトータルとしては節約になるという説明がなされており(防衛省ホームページに掲載の概算要求の説明)、法案第3条ではこれによる節減効果の公表も定められている。とはいえ、実際に業者から5年契約と10年契約の2種類の見積りを取って比べる訳ではなく、あくまでも仮想の計算に過ぎないから、そこに人為的な誘導が働かないという保障はない。実際に、小泉総理(当時)の「人生いろいろ」発言まで飛び出した2004年の年金国会の際の政府の推計がいかに杜撰なものであったかは記憶に新しいところである。

 【財政民主主義からも疑問
 いかなる施策であれ,その実現には経費を必要とする以上、何にどれだけ財源を配分し、その財源をどこからどう調達するか、主権者の代表である議会の審議に付すことにより、財政面を通じても政権を民主的統制下に置くという財政民主主義は主権在民の要請に基づくものである。しかし、この法案は,二重の意味でこの要請に反している。
 まず、初年度に計上する金額を小さく見せる一方で、後年度に先送りされた負担の全体像が見えにくい。もちろん、予算書には項目毎に向こう何年間でいくらという記載はあるが、年割も全項目の合計も表示されていない。合計を出すには膨大な書類にソロバンを入れていくしかないし、そもそも年度毎の金額がないから、いつ支払いがピークを迎え、それが全体の財政規模に占める割合がどの程度なのかが判断できない。
 もう一つは、同じ予算規模でも、過去の「ツケ」の占める割合の大小で政策の選択の自由度が格段に異なってくるということである。審議し議決すべき対象の大半が「指定席」で占められるようなことになれば、財政民主主義は画餅に帰してしまう。
 それに、こうした予算の仕組みの根幹に関わるような案件を、財政法本体ではなく防衛装備品に特化した特別法で処理しようとしていることについても、軍事費の聖域化という隠れた狙いがあるのではないかと心配するのは勘繰り過ぎだろうか?

 【戦前の反省は何処へ】
1937年と言えば,2・26事件の翌年であり、満州事変の6年後であり、慮溝橋事件の起きた年であるが、この年、近衛内閣は「臨時軍事費特別会計法」なるものを成立させた。この特別会計は「時局終局までを1会計年度とする」という極めて異常なものであり、その財源としては前記法律と同時に成立した「臨時軍事費支弁のための公債発行に関する法律」に基づき戦時公債で賄われた。これでは財政規律など無いに等しい。
 現在の財政法が単年度主義を原則としているのは、この反省に基づくものであり、実は、これまで述べてきた「債務負担行為」は例外的な措置なのである。複数年度にわたる予算措置には「債務負担行為」の他に「継続費」もあるが、いずれも原則5年以内とされている。それでは、ダムや新幹線や高速道路のような長期プロジェクトはどうするのかと言うと,予算とは別に「第○次全国○○整備○か年計画」のようなものが閣議決定され、当該長期計画上の位置づけを対照しながら各年度の予算が議論されている。
 ところが、こうした経過を知ってか知らずか、2013年4月18日の憲法審査会で財政条章を取り上げた際には,自民党からも民主党からも複数年度予算の解禁を求める声が出された。そうした際によく持ち出されるのが予算消化のための年度末の駆け込み工事である。しかし、これは単年度主義のせいではなく、獲得した予算は何があっても使い切るという姿勢が問題なのである。ちなみに、財政法第6条は使い残した予算は公債の返済に回すという趣旨の規定になっている。
 かつて「政治とカネ」の問題が小選挙区制度へとすり替わっていったし、最近では心がけの悪い議員の問題を議員定数の削減(少数者からの事実上の参政権の剥奪)へと誘導する動きがある。その意味からも、複数年度予算の議論には注意と監視が必要だ。  (小川 良則)

         「 登戸研究所資料館」
 半年ぐらい前に「陸軍登戸研究所」というドキュメンタリー映画を観たが、「風船爆弾」「偽札づくり」「伴繁雄」が印象深かった。その映画が「下準備」ともなっていたので、「資料館」での説明は非常に解りやすくて良かった。「この資料館は、“被害の”ではなく、“加害の”展示である。」という説明から始まった。それを意識して「明治大学「平和教育登戸研究所資料館」としたようだ。▼第一次世界大戦で飛行機、戦車、毒ガスなどの「大量破壊兵器」が登場した歴史を踏まえ、「科学を結集する」ということで1937年に「陸軍科学研究所登戸実験場」として開設され、最初は主に電波兵器の開発するための施設だったが、39年から毒物・薬物・生物兵器、スパイ用品、偽札・偽造パスポート製造などの施設を拡充し、「秘密戦」−防諜(スパイ防止)・諜報(スパイ活動)・謀略(破壊・撹乱活動・暗殺)・宣伝(人心の誘導)の4つの要素から成り立ち、戦争には必ず付随するものの、主として秘密のうちに水面下で行われる戦い−を担う施設となった。▼「秘密」戦であり、開発された兵器・資材には、人道上・国際法上問題のあるものも多く、戦争中はもちろん戦後も明らかになることはなかった。敗戦時には「証拠隠滅」が行われたり、「731部隊」と同様に米軍がその技術を得る代わりに「戦犯」を問わない、という取引があった、という詰もあるようだ。その技術は、朝鮮戦争、ベトナム戦争にも使われた、という詰もある。▼長い間、表に出ることがなかったが、1980年代に反核・平和運動のたかまりの中で高校生が「平和ゼミナール」の一環で、自分たちが生活する地域の戦争の歴史に向き合い、調査に乗り出したのがきっかけで、「元所員」らが口を開いて行くようになった。▼第二科第一班長というそれなりの地位に居た「伴繁雄」氏が長い間沈黙をやぶって、高校生たちとの交流の中で心を開き、証言していく。映画の中で彼の沈黙の表情は「人間を信じない」、奥さんすら信じないような硬い表情が強く印象に残りました。「伴繁雄氏が証言し、「あの人が証言したのなら…」と、「元所員」のより多くの人たちが証言するようになったという。▼こうした地道な調査、証言があって、「資料館」が出来上がってきた。いや、未だこれからも証言や資料が発掘されていくに違いない。「フィールドワーク」で訪れてみたいところ。   (関川 昇)

千葉  安倍内閣の暴走を阻止できる組織強化を

  憲法を活かす会千葉県協議会(県協と略)は第12回総会を、10月4日京成労働会館で開催しました。今年も地区の活動報告を主にして記念講演はやめました。

  A.主な活動経過報告
 1.地区活動

 県内には15地区(自治体)に活かす会があり、独自にそして他団体と共闘して日常活動をしています。この1年間の特徴は、安倍政権の軍事大国化に反対する学習や街頭宣伝などが活発化しつつあること、長生村(4月)、野田市(5月)、松戸市(11月)で自治体選挙に取組んでいることです。
 原爆の絵展を「東京新聞」が報道し、来場者が増え市長も観覧にきた八千代市。再建活かす会の活動が軌道にのってきて「夢のある活動」をよびかけた船橋市。市内3行政区で活かす会準備会をつくり、それぞれが活動をはじめた千葉市。物販活動で憲法集会などを無料開催した山武・長生・山宮地区。 「憲法を守ろう市原市民連絡会」を「活かせ憲法…」と改名し、無料映画会、学習会、大集会開催、市内共闘をリードしている市原市、学習をつづけながら地域共闘の一翼をにない、大集会や複数個所の定期街頭宣伝をしている木更津前の「西かずさ九条の会」「平和・人権の会」、松戸市の「活かせ9条松戸ネット」「改憲阻止の運動交流会」。「1000人委員会」の署名活動で、安倍政権に賛成の人との対話を続ける成田市からの報告がありました(発言順)。
 2.憲法集会
 5月11日に半田滋さんの「安倍改憲を阻止するみち」講演会を県協単独で開催。参加者、賛同団体とも前年より少しだが増えました。
 3.脱原発
 県内では「原発さよなら千葉」の諸活動に全面的に協力しています。
 4.特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認に反 対する闘い
 県協としては国会前集会、中央集会に参加しました。
 5.諸・団体との連帯・交流
 「戦争をさせない1000人委員会」の県内結成準備会に参加。「パトリオットミサイルはいらない習志野基地行動実行委員会」に参加。平和のつどい・原爆の絵展は県内11地区で開催。来年はl、2地区増える見込み。オスプレイ来県に反対する団体創設に参加予定です。

  B.活動方針
 情勢に見合った運動ができる組織づくりを重視し、地区活動の積極的交流、HP有効活用、県の学習会・集会を年1回以上開催。「5・3」、「12・8」などの各地区の行事に協力します。
 運営体制強化のため全地区からの参加、会議前学習充実、事務局拡充、会報の内容改善と定期発行に努力。関東連絡会をはじめ諸団体との連帯・交涜を積極的にします。
 決算・予算案とも議案を全会一致で可決、「沖縄の反基地・知事選勝利の連帯決議」を採択し、広瀬世話人(共同世話人の村松さんは顧問に、堀さんは2月に逝去)、上野運営委員長、荒川・永野副委員長、工藤事務局長を要とする新運営体制が発足しました。
 沖縄カンパ 憲法を生かす会関東連絡会で、10月〜11月に「止めよう!辺野古新基地建設一沖縄へ、連帯と支援のカンパ」を呼びかけ取り組みましたが、トータル約23・8万円が各県からそれぞれ沖縄平和市民連絡会に送られました。これとは別に知事選カンパも含め千葉から約20万円が沖縄に送られました。とりあえず報告とします。ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。

栃木  「集団的自衛権を考える」学習会の開催 

  栃木の活動は、会員や新社会党員が減少するなか、他の平和団体が主催する集会に参加しているというのが今の状態ですが、毎年1回、「宇都宮市平和の日」(市が定めている宇都宮に空襲のあった7月12日)から8月15日までの「宇都宮市平和月間」に合わせて、「憲法を生かす会・栃木」「学ぼう平和憲法・栃木ネットワーク」「九条の会・栃木」で活動している仲間と共に続けている「宇都宮平和映画会」があります。各自の所属団体は後援として明記し、宇都宮市、宇都宮教育委員会、各新聞社から後援を取り、新聞にも掲載して頂いています。今年も7月19日に7回目となる映画会を行いました。
 今年は「集団的自衛権行使の容認」が閣議決定されるという時期に、「集団的自衛権」とは「戦争のできる国になる」ことだと訴え、太平洋戦争末期、東京大空襲で一人生き残った少女、原作者高木敏子さんが経験した事を映画化した「ガラスのうさぎ」を上映しました。観客は125名で、毎年同じ位の参加が有ります。映画会アンケート結果は「憲法生かす会・栃木(宇都宮平和映画会)」のHPに掲載しています。
 11月16日には、今年で3回目となる「さよなら原発!栃木アクション」が宇都宮城址公園で開催されます。日本名水百選に選ばれている「尚仁沢名水」が湧き出る塩谷町に国が原発指定廃棄物(最終)処分場を建設しようとしていますが、塩谷町が「命の水を脅かす」として反対運動を立ち上げる中での今年の集会になります。多数の参加が見込まれます。憲法を生かす会としても旗を掲げて参加し集会の後、宇都宮 市繁華街をパレードします。
             □
 10月11日に、「集団的自衛権を考える学習会」を宇都宮市内の会場で開催しました。憲法を生かす会の筑紫さんを講師にお願いして「集団的自衛権ってなあ−に?」サブタイトル「海外で戦争する国になるのはイヤ」と題して行ないました。集団的自衛権問題での学習会は、栃木県平和センターが県内主要都市で「リレー講演会」を行っているほか、九条の会・栃木や宇都宮地区労、雀の宮勤労協も実施しています(新社会党の栃木もこれらの集会に参加しています)が、講師がいずれも弁護士さんであり、「違った角度」から話を聞きたいという意見があり開催したもの。弱小な栃木ですが、憲法を生かす会の会員、「新社会」読者、宇都宮地区労、市民ユニオンの仲間の(20名強)に参加をして頂き、憲法を生かす会・栃木として独自企画での学習会は何年かぶりの開催でしたが好評でした。
 7月1日間議決定の内容説明、「安保理に報告された武力行使の事例」、東京で行っている集会や国会包囲行動など運動・実践的な課題も含めて話して頂きました(憲法を生かす会栃木のHPに掲載)。
 質疑応答では、「香港のように学生が道路を占拠してまで、国の方針を阻止する活動が出来ないか」 「憲法違反の閣議決定や『特定秘密保護法』を違憲として裁判所に訴える事はできないか」などの質問がありました。これから政府が進める「戦争法制」に対し、どう反対運動を進めていくか、問われる学習会になりました。 (上澤 美男)

 さような5原発1000万人アクション
   2015年1月24日(土)夜間豊島公会堂 川内原発再稼働阻止東京連帯集会(予)

      *1月25日現地集会(鹿児島市内)/現地と連携し国会前抗議行動も

 第18回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会 
   2015年2月14日〜15日 名古屋市/名古屋学院大学白鳥校舎他

      *スタディーツアー:自衛隊小牧基地及び周辺の軍事産業

   編集・発行:憲法を生かす会関東連絡会
 連絡先:憲法を生かす会東京連絡会
 〒101−0032 東京都千代田区岩本町2−17−4
 電話03−5820−2070FAX O3−5820−2080