第二一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

表現の自由

強まる規制の流れ

メディア、影響を懸念


 いじめ、不登校、携帯依存…。中学生を取りまく社会問題を絡めつつ、主人公の「あすか」と「番長組織」の戦いを軸にストーリーは進む。
 「花のあすか組!」。鹿沼市在住の漫画家、高口里純さんの代表作だ。
 「若い世代が読むので暴力シーンの描写には気を付けています。最近の漫画の傾向として、せりふは制約が多いのに、絵のほうはどんどん過激になっていますからね」。高口さんは、そう語る。
 暴力や性描写を含む「有害情報や図書」の出版・販売が青少年に悪影響を与える恐れがあるとして、自民党は、憲法二一条の「表現の自由」に一定の制限を検討している。
 もし、自分の作品が法的な規制を受けることになったら−。高口さんは、きっぱりと言った。
 「同業者、編集者にチェックを受けるなら仕方がない。プロですからね。でも、漫画のことが分からない役人に規制されたくない。『この程度のものまで駄目なの?』となりかねないですから」

■議論はこれから

 戦前に検閲や言論弾圧が横行した反省に立ち、現憲法は「集会、結社、言論、出版、その他一切の表現の自由」を手厚く保障する。国民が政府や地方公共団体を監視するための基盤でもある。
 だが、改憲論議が進む一方で「二一条」の根幹にかかわる動きもある。
 三月二十五日、県発行の公報に県内二十一の法人名が並んだ。武力攻撃などに備える国民保護法に基づき、避難・救援に協力する「指定地方公共機関」。とちぎテレビ、栃木放送、エフエム栃木の三社が含まれていた。
 同機関に指定されると、放送局は警報や避難指示などの放送を義務付けられる。他県では「報道・表現の自由への影響」を懸念して、指定に慎重な対応が相次いでいる。
 埼玉県は昨年十一月、指定に向け、有事の際の役割を定めた「国民保護計画」の素案を提示。「ヘリコプターで撮影した映像を県に転送する」として、放送局に情報提供を求める内容もあった。
 これに反発したテレビ埼玉は十六項目の見直しを要求。県側と交渉を重ねた結果、「映像の転送」は削除され、「言論その他、表現の自由の保障」が新たに明記された。
 テレビ埼玉の井上正一業務局長は「取材・報道の自由が大前提。その保障がなければ指定は受けなかった」と断言する。
 本県では、指定をめぐるこうした議論はなかった。今月十八日に国民保護協議会を開いて国民保護計画作りに入る。「表現の自由」の議論はこれからだ。

■「沈黙の産物」

 改憲をめぐっては、メディア規制を強めようとする流れがある。憲法改正手続きを定める国民投票法案でも、新聞、雑誌が「投票結果に影響を及ぼす目的」で報道することを禁じている。
 四月十八日、参院議員会館で開かれた「国民投票法案を考える緊急院内集会」。護憲派の議員や市民ら約百三十人が集まり、弁護士らが「新しい憲法が沈黙の産物でいいのか」とメディア規制を批判した。
 そこに、本県関係議員の姿はなかった。

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